二十歳の女の子は白いパンプスを持って防空壕へ走った

こんにちは。合同会社じぶんらしくの藤嶋ひじりです。
8月6日の夜、寺嶋康浩のライブペイントがありました。

イベント名は
「Ask the sky on August 6th 8月6日の空に描く、奏で、話す」
今日から広島に想いを馳せるイベントで
ジャズピアニストの大前チズルさんが企画されました。

このイベントについての報告は寺嶋の記事にあるのでご覧ください。
この記事では、私が心に残ったことを書いてみます。

戦争を知らない世代。
「私には関係ない」と、だれもが思うものだと思います。

50代の私でも正直なところ
「戦争は、過去。もしくは、よその国の話」。

だけど、本当は、さほど昔のことではなくて
かわいがってくれた祖母は渦中にいたし
少なくとも、私の両親は、すでに生まれていました。

母は1941年生まれなので、あまり記憶がないようですが、
父は1937年生まれ。
戦時中、中国本土(済南)に住んでおり、
祖父母はそこで雑貨屋を営んでいたらしく
戦後、青島を経て、長崎に渡り
福井県へと、命からがら帰国しています。

その青島までの道中の怖かった記憶について
私は父から直接聞いています。

帰国後も、父は「中国帰り」だからと
ひどい言葉を浴びせられたそうです。

子どもだった両親たちのなかに
「毒」を撒いたのは、この国。

私たちが、自分の親のなかに「毒」を感じることと
過去の戦争とは、大きく関係しているのではないでしょうか。

つまり、戦争は、日本人のなかで
本当はまだ終わっていないのかもしれないのです。

その影響を、私たち50代でさえ受けているのですから。

 

 

そして、原爆について。

生々しい記憶を描いた漫画『はだしのゲン』の衝撃。
50年近く前に読んだのに、私は、まだ、忘れていません。
脳裏にあの絵が浮かんできます。

姉が広島大学に進学し
私は、姉大好きだったので何度も広島に通いました。
バイクの免許を取ったら、バイクで通いました。

だから、私にとって「広島」は
親族がいないにも関わらず
わりと近しいものです。

だからでしょうか。
8月6日、私は、毎年、朝からそわそわします。
黙祷もしています。
式典の中継を見ながら涙ぐむこともあります。

それでも、本当の苦しみなどわかりません。
わかるわけがないのです。

どんなに広島に通ったところで
想像したところでわかりません。

なによりも、『自分ごと』ではないからです。

だからこそ、今回の守田さんの話が
ぐっと胸を掴まれて、うるうるしながら、私は聞きました。

このイベント2部の最後に
被爆二世の守田敏也さんのお話がありました。


寺嶋の絵の片づけのサポートをしていたのもあり
最初から聞けたわけではないのですが
今年の話は、特に、響いたのでした。

守田さんのお母さんの話。
戦時中、二十歳ぐらいだったそうです。

広島の原爆ではなく
空襲に巻き込まれたときの話でした。

彼女は、“位牌を持って防空壕に逃げる”
という役割を担っていたそうです。

しかし、当時の彼女にとっての宝物は
「白いエナメルのパンプス」。
だから、そのパンプスと位牌を風呂敷に包んで
空襲のなかを走って逃げたのです。

そして、風呂敷に火が燃え移ったときに
「どうか燃えているのがパンプスではありませんように」
と、こっそり祈ったのだそうです。

それが、リアルな二十歳の女の子の気持ち。

その話が、私には強く響きました。
申し訳ないけれど、
二十歳の女の子にとっては、
先祖の位牌より、白いパンプス。
燃え盛る炎のなかを逃げる二十歳の女の子の
恐怖と不安、そして、パンプスへの想い。

戦争の話を聞くとき、私たちはどこかで
ちょっと落ち着いた昔の日本人を
思い描いていないでしょうか。

難しい言葉を使い、きれいな文字を書く
落ち着いたしっかりした若者を想像していたりしませんか。

それは戦争に駆り出され大人たち不在の
日本のなかで、無理やり「大人」にならされた
ならざるを得なかった、当時の10~20代の若者たち。

そんな彼らの等身大の想いを
このパンプスのエピソードで少し想像できたのです。

本当は楽しいことがしたいのに
思い切りスポーツしたり、本を読んだり
歌ったり踊ったりしたいのに
それらがゆるされなかった戦時中の子どもたち。

そんな彼らの命を奪ったのだろうと思うと
原爆も空襲も、さらに罪深く重苦しく感じます。

こうした生の話を聞ける機会も、
これからさらに減っていくのでしょう。

さて、守田さんのお母さんのパンプスはどうなったのか。
それは、守田さんと会って、聞いてみてはいかがでしょうか。
さまざまな活動をしておられますのでチェックしてみてください。

・明日に向かって 守田敏也Web
https://toshikyoto.com/

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